液体中に希薄濃度で存在する香気化合物を選択的に回収する技術として、膜分離技術の一つである浸透気化分離法 1 を検討している。当該方法は、膜を介して片側に液体を供給し透過側を真空に保つことで、水溶液中の香気化合物が膜中を移動し、分離膜の反対側から脱着する。この脱着化合物を冷却して液体として回収することができる。 本法の分離膜素材として、幅広い極性と細孔径を有するゼオライトに着目した。
今回試料として用いた市販の日本酒には、 フェニルエチルアルコールやイソアミルアルコールなどのアルコール類をはじめ、フルーティーな香りで知られるエステル類や酸臭を呈する 酸類が含まれていた。 各種ゼオライトへの香気化合物の吸着 の程度は、化合物の官能基によって異なり、ゼオライト吸着後の回収液にも複数の香気化合物が残存していた。
なお、ゼオライトから脱着した化合物は吸脱着前の化合物と変わらず、エタノール共存下であっても香気化合物の変換は生じなかった 。ゼオライトに吸着される香気化合物と日本酒中に残存する化合物の違いや 吸着に影響を与える成分について引き続き検討している。