本研究では, 高脂血症者の地域住民を対象に, 運動・食事療法が身体組成や体力および血清脂質値に及ぼす影響について検討した。対象は健康教室に参加した中高年高脂血症女性19名である。参加基準として高コレステロール血症 (TC≧220mg/dl, LDL-C≧140mg/dl) を満たすこととした。教室は週1回, 食事・運動指導を各1時間ずつ12週間実施した。さらに, 日常の運動として1日1万歩を目標にウォーキングを実施させた。対象者のうち, 以上の運動を行った11名をI群とし, 以上に加えて, 50%VO2max強度の有酸素運動を自転車エルゴメーターを用いて, 週3回, 1回40分を教室期間中実施した8名をII群とした。基礎調査は, 形態測定, 安静時血圧, 血液生化学的検査, 最大酸素摂取量, 食事調査を教室の前後に測定した。形態測定の結果, I群では体重, BMI, Fat Massが減少し, II群では以上の項目に加えて%Fat, ヒップ囲, SBP, DBPが減少した。血液生化学的検査の結果, I群ではTC, TG, β-L, LDL-C, FBSが低下し, II群ではTC, TG, LDL-C, FBSが有意に低下し, HDL-Cが有意に増加した。食事調査の結果, 栄養素等摂取量, 栄養比率, 食品群別摂取量ではI, II群とも有意な差はなかった。以上の結果, 最大酸素摂取量が有意に増加しない程度の運動でも, 身体組成や血清脂質レベルに好影響を及ぼすことが確認できた。定期的な運動を付加した群 (II群) では, より顕著な改善効果を認めることができた。