本研究の目的は,実験動物を用いて,運動により神経栄養因子とその受容体の発現がタンパク質レベルで変化するかどうかを脳,脊髄及び骨格筋で確認することにあった.平成14年度は,糖尿病により神経変性が生じているラット(ヒラメ筋の神経線維の横断面積が減少している)に,トレッドミルによるランニングトレーニングを4週間行わせた.トレーニング終了後,脳,脊髄及び骨格筋を摘出し,ホモジナイザーにより試薬とともに破砕・混合し,遠心分離後,摘出組織の試料調整を行った.調整した試料を電気泳動した後,トランスファーボックス内でメンブレンに転写させた.メンブレンに神経栄養因子(BDNF, NT-4)とその受容体(Trk B)の抗体を滴下し,染色反応により可視化した.その結果,骨格筋においてのみNT-4のタンパク発現量が増加する傾向にあった.しかし,ヒラメ筋の神経線維の薄切切片を作成し,顕微鏡下で横断面積を測定した結果,有意な変化は認められなかった.さらに今後も,運動による神経栄養因子の発現と神経細胞の形態適応の関連を研究していく必要がある.