高齢者の歯・口腔の健康は摂食と構音を良好に保つために重要であり,生活の質(QOL)の向上にも大きく寄与するとされている.歯を20本以上有することは,口腔の機能を維持し,さらには全身の健康に寄与する一つの基準とされている.厚生労働省は日本人の長寿を支える「健康な食事」を示している.そこで本研究は,現在歯数20本以上の75歳高齢者が「健康な食事パターン」を満たしているか検討した.対象は2003年新潟市高齢者コホートスタディに参加し,口腔内診査,健康診査,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)調査等に協力が得られた75 歳高齢者338人とした.「健康な食事パターン」は「健康な食事」を参考にした.「健康な食事」は料理区分を主食,主菜,副菜とし,1食の上限および下限値を定めている.本研究は,下限値の3倍量を主食,主菜,副菜の下限量/日と定めた.3料理区分すべてを満たしている食事パターンを充足群,それ以外を不足群とした.対象者を現在歯数20本以上,未満の2群に分け,現在歯数と「健康な食事パターン」の関連について多重ロジスティック回帰分析を用いて評価した.結果として,現在歯数を20本以上有する群の「健康な食事パターン」充足に対する調整オッズ比は1.7(95% 信頼区間=1.1-2.6)であり,統計的に有意だった.結論として,地域在住高齢者において現在歯を20本以上有することと食事パターンの間に関連があることが示された.