カキ茶の原料となるカキの葉中の食物繊維の存在状態を明らかにするために, 種々の試料を用いて, 形態学的, 組織化学的及び分析化学的な面から検討を行った。
1. カキの生葉の横断面には, 上面の表皮, 棚状組織海綿状組織及び下面の表皮の4層の組織が観察された。表皮細胞の細胞壁及び上面の表皮細胞の液胞に多糖類の強い呈色反応が認められた。
2. 5月及び7月葉の組織化学的観察結果を9月葉と比較すると, 5月及び7月葉において多糖類の強い呈色反応を認めた。酸性ムコ多糖類様物質は各層の細胞壁, 特に上面の表皮細胞の自由表面側細胞壁に強く染色されたが, 月別で顕著な差異は認められなかった。
3. 凍結乾燥粉末試料の観察結果より, 生葉で観察された4層が比較的保持されていた。また, PAS反応及びAB染色に対しては生葉とほぼ同様の反応が認められた。
4. 抽出食物繊維標品は, 4層の組織の配列が乱れ弓大部分を占める細胞壁に形態的変化がみられたがPAS反応及びABの両染色に対しては生葉とほぼ同様の反応が見られた。
5. カキの葉の凍結乾燥粉末の主成分は食物繊維 (無水物換算で41-43%) であり, その組成はリグニン, セルロース, ヘミセルロースがほぼ同量含まれ, 水溶性難消化性多糖類はわずかでほとんどがペクチン質で占められた。
以上のことから, カキの葉は4層の主組織から構成され。各層の細胞壁にはほぼ同量のリグニン, セルロース及びヘミセルロースと, さらに酸性多糖類として僅かなペクチンのほか、ムコ多糖類様物質を結合した複雑な構造を有する食物繊維を含むことが示唆された。