本申請課題は、幼児(年中児:4-5歳)と保護者のナトリウム(Na)とカリウム(K)摂取量やその比(Na/K比)、変動量および地域差等を起床後第1尿による尿中排泄量から推定し、幼児と保護者間の尿中排泄量の関連や食行動等の規定因子ついて情報整備を行い、次にその結果に基づいて幼児を対象にした多職種連携による食塩管理を主眼とした科学的な食育のあり方を提案するものである。
平成30年度は、保護者と幼児400組の登録を目指し、2地域(西日本:福岡県、東日本:福島県)で6園の研究連携幼稚園で研究説明会を実施した。研究説明会に出席した452名の幼児の保護者に研究の概要を説明し、同意が得られた365組の幼児と保護者を研究対象者として登録した。研究対象となった幼児とその保護者には、4-5月(春季) と10-11月(秋季)の各2日間(月・火曜日)における起床後第1尿(8検体/組)の提出を依頼した。なお、尿の採取は、保護者の非月経期間において、幼児と同日となるよう依頼した。また、食事調査として、妥当性が確認された食事調査票への回答を依頼した。全ての研究データを提出した研究対象者を最終解析対象者とし、次の3つの観点から解析を行い、研究成果を得た。
ア)幼児338名を対象に春季の尿と食事調査を用い、幼児の尿Na/K比は、麺類、嗜好飲料類、調味料類が正に、果実類が負に影響していたことが示された。イ)母子297組の春・秋季の尿を用い、子の尿Na/K比は母の尿Na/K比に影響していることが示された。ウ)母子297組の春・秋季の尿を用い、子の尿Na/K比は地域差を認めなかったが、母の尿Na/K比は西日本の母に比較して東日本で有意に高値であった。この要因として、子の尿Na/K比が、両地域において母を凌ぐ高値となっており、ア)の研究成果である尿Na/K比に影響する食品を薦める食育の確立が急務であることが示された。