アポEKO(アポEノックアウト)マウスの動脈硬化形成の機序を解明する目的で,アポEKOマウスの血清からカイロミクロン(CM)+超低密度リポタンパク質(VLDL),低密度リポタンパク質(LDL),高密度リポタンパク質(HDL)を分離精製し,それぞれの画分の脂質組成とタンパク質組成について正常マウスと比較し,以下の結果が得られた。1.アポEKOマウスの血清総コレステロール(Chol)は正常マウスに比べ約7倍,トリグリセライド(TG)は約3倍高かった。2.アポEKOマウスのCM十VLDLとLDLのChol+TG/リン脂質比は,それぞれ正常マウスの2,0倍,3,2倍に増加し,アポEKOマウスのCM+VLDL,LDL粒子内に正常マウスの2〜3倍の脂質を含んでいた。3.SDS一電気泳動によるタンパク質組成の分析から,アポEKOマウスではアポEが検出されないことが確認された。アポEKOマウスのLDLにはアポB-100よりもアポB-48が多く存在し,正常マウスとは逆であった。また,アポEKOマウスのLDLには正常マウスではみられないアポA-I,アポA-IVが存在していた。脂質化学組成,タンパク質組成の分析からアポEKOマウスでは正常マウスと比べてCM+VLDLとLDLに質的異常が見出された。アポEKOマウスの動脈硬化形成はHDLではなくCM+VLDLとLDLの質的異常に関連することが示唆された。