血中の高密度リポタンバク質(HDL)と心筋梗塞や動脈硬化の発症との間には、負の相関があることはよく知られている。HDLは末梢組織の余剰のコレステロールを引き抜き、肝臓に逆輸送する機能(reverse cholesterol transport)を担っている。HDLには低密度リポタンパク質(LDL)と同様にHDLに特異的な細胞膜レセプターの存在が示唆されている。しかし、未だに決定的な証拠に乏しいのが現状である。これを解明するためには、コレステロールの最終運搬場所である肝臓細胞膜のHDL-レセプターの同定とその分子解明が必要である。そこで、HDLの主要アポタンパク質であるアポAlをDNP化して、リガンドブロッティングを行う、迅速かつ簡便なHDL-レセプターの検出法を開発し、比較検討した。モデル動物として、HDLが少なくLDLが多い点でヒトと似ているウサギを用いた。0.5%コレステロール添加食で5週間飼育したウサギは、コントロールに比べ血清総コレステロールで約40倍、HDL-コレステロールで約3倍に増加した。また、10%ペクチン添加食で5週間飼育したウサギは、コントロールに比べHDL-コレステロールで約1.2倍に増加した。0.5%コレステロール添加食ウサギ肝臓のHDL-レセプターの発現は、コントロールに比べ2倍以上増加した。これは、末梢組織の余剰のコレステロールを肝臓に逆輸送し、異化させるためのアップレギュレーションが働いたと考えられる。また、10%ペクチン添加食ウサギ肝臓のHDL-レセプターの発現は、0.5%コレステロール添加食ウサギと同様に増加した。これは、食物繊雑であるペクチンがHDL-レセプターの発現を増加させ、動脈硬化を予防することを示唆している。食物繊維摂取で肝臓の胆汁酸中間代謝物に変動を及ぼすのかもしれない。したがって、胆汁酸の中間代謝物(7α-ヒドロキシコレステロール等)がHDL-レセプターの転写調節因子に関与しているのではないかと考えられる。食物繊維を添加するとHDL-レセプターが高進することから、これがどのような機序によるのかを解明し、抗動脈硬化作用との関連について検討していきたい。