閉経後の女性では、閉経前の女性と比べて、心筋梗塞や動脈硬化などの循環器疾患の発症率が有意に高いことがよく知られている。閉経後の女性では女性ホルモンのエストロゲンの低下が著しく、これが動脈硬化の病因であると理解されてきた。エストロゲンは男性ホルモンのテストステロンを基質として、卵巣などの生殖器官に存在するアロマターゼと呼ばれるチトクロームP-450酵素の触媒によりつくられる。平成12・13年度の検討によって、アロマターゼ遺伝子をノックアウトしたマウスに高コレステロール食を4ヶ月間与えても、動脈硬化を発症することができないことがわかった。マウスは元来動脈硬化を発症しにくい動物であり、エストロゲンの欠如だけでは動脈硬化発症には至らないものと思われた。そこで、平成14年度には、自然発症的に動脈硬化をきたすアポEノックアウトマウスを購入し、アロマターゼ遺伝子とアポE遺伝子の両遺伝子をノックアウトしたダブルノックアウトマウスの作成を試みている。イソフラボンを含む大豆たんぱく質には、抗動脈硬化作用があることが知られている。さらに平成14年度には、水に抽出したSPIをカラム処理することによって、イソフラボンを除いたIF-SPI(Isoflavone-Free SPI)を調製した。アポEノックアウトマウスをSPI又はIF-SPIを含む飼料で飼育し、イソラフボンに抗動脈硬化作用があるか検討した。...