本論文では、過去の研究成果に加えて、新たにフォント(文字の形状)の違いが被験者に与える影響を調査した。具体的には、“表音文字である、ひらがな・カタカナ・漢字”と表“意文字である漢字”において、フォントを4種類(明朝体・ゴシック体・丸ゴシック体・行書体)に変更して過去と同様の調査をおこなった。
この調査の結果、過去の研究成果から予測される通り、鋭角な頂点が多いフォントである、“行書体>明朝体>ゴシック体>丸ゴシック体”の順に意味の度合が高い事が判明した。この結果から、たとえ意味が同一の文字でも色彩やフォントの違いによって、人間に与える色彩感情の変化の度合が違う事が判明した。
また、この手法は、美術科教育等において、活用が可能になると考えている。例えば、ポスター作製における標語(文章)等を記述する際に、文章の全てを同じ色彩やフォントで記述するのでは無く、強調したい(意味があると思わせたい)部分や、逆にあまり強調する必要が無い部分に合わせて変化させる等である。今回の一連の調査で判明した、“ひらがな・カタカナ・漢字”・“フォント”・“色彩”の3つの要素を使い分ける基本的な指針を、教員が児童・生徒に指導する事が可能になり、授業等への活用が可能になると考えている。