著者らは、以前から“美術(教育)における色彩の研究” をおこなっている。最近は、“絵本における色彩と感情の
関係 〜ミッフィー(うさこちゃん)の絵本を題材として〜” において、絵本における色彩と色彩感情の関係を調査
した。この研究では、絵本の一連のストーリーの構成要素である各ページについて、カラー・グレースケール・線画
(輪郭線)の3種類を用い、多数の被験者による実験によって、被験者が受ける印象の変化を調査した。この結果、“カ
ラー→線画→グレースケール” の順に連想用語の好意的な値が高い事が判明した。これらの結果から、絵本から受け
る印象は、画像の色彩や明度に影響される事が判明した。
また、先の研究では、直接の調査対象では無かったが、絵本(図形)の内容(意味)が容易に分かる場合と、容易
に分からない場合によって、色彩の与える影響が大きく変化した。本研究では、これらの点に関して、複数の簡単な
図形に対して、回転や色彩を変化させ、多数の被験者による実験によって、被験者が受ける印象の変化を調査した。
この結果、意味が有ると思われる及びそれと似た図形は、回転や色彩によって、被験者の受ける印象が大きく異なる
事が分かった。しかし、意味が無いと思われる及びそれと似た図形は、回転や色彩によって、被験者の受ける印象は
大きく変化しなかった。これらの事から、図形の持つ意味的な要素は、色彩と大きく関係している事が判明した。