著者らは、以前から“美術(教育)における色彩の研究”をおこなっている。著者の一人である“姉川正紀”が、プログラムの作成や、実験環境の構築を担当している。もう一人の著者で、美術の教員である“姉川明子”が、実際の美術教育の現場において、研究結果の実践をおこなっている。
最近は、絵本における色彩に関する研究をおこなっている。文字が読めない乳幼児が、1人で絵本を読む(見る)時は、絵のみを見ていると推測される。過去に大人から読み聞かせてもらった絵本であれば、文章の内容を記憶している場合もある。しかし、過去にその様な経験が無い場合、絵のみである程度内容を把握している可能性がある。絵の情報としては、主に図形及び色彩の2つの要素がある。以前の我々の研究では、色彩にのみ着目し、絵本の内容と色彩に関して、相関の有無を調査した。この結果、絵本の内容と色彩に関しては、ある程度の相関がある事が示唆された。
本研究では、以前の研究をさらに発展させ、絵本の一連のストーリの構成要素である各ページについて、カラー(オリジナルと同じ色彩)・グレースケール・線画(輪郭線)の3種類を用い、多数の被験者による実験によって、被験者が受ける印象の変化を調査する。この結果、“カラー→線画→グレースケール”の順に連想用語の好意的な値が高い事が判明した。これらの結果から、絵本から受ける印象は、画像の色彩や明度に影響される事が判明した。