脊椎動物の染色体DNAのCpG配列中のシトシン塩基の5位はしばしばメチル化されており、組織、発生段階に特徴的なメチル化模様を示す。脊椎動物では、このシトシンのメチル化は、組織特異的な遺伝子の発現、哺乳類における遺伝子刷込とX染色体の不活性化、発癌などの原因との一つとして寄与している。これは、転写因子を始めDNAに結合する蛋白質が結合配列付近がメチル化されると結合できなくなるか、メチル化されたDNAを認識して結合する蛋白質がクロマチン構造を変化させる結果であると考えられる。
染色体DNAのメチル化模様は胚発生過程で組織特異的に形成され、複製時には維持される。メチル化模様を新たに形成するDNAメチルトランスフェラーゼとしてDnmt3aと3bが、そして、一旦形成されたメチル化模様を維持するDnmt1が知られている。これらDnmtsが様々な調節を受け、染色体DNAのメチル化模様は形成・維持されている。
本研究計画では、Dnmtsがどのような機能領域構造を持ち、DNAのメチル化状態の調節にどのように寄与しているかを明らかにすることを目指す。本年度は次のような結果を得た。
Dnmt1の領域構造
Dnmt1は分子量が180kと大きく、C末端側約40kDaに細菌型のシトシンメチラーゼと相同の触媒領域を持つ。N末端側の大きな領域はDnmt1の局在や基質認識に寄与する「調節領域」とされているが、その領域構造の詳細については明らかではない。精製したDnmt1のプロテアーゼ耐性断片を解析し、PCNA結合領域を含むN末端約40kDaが領域構造を取ると推定した。