脊椎動物の染色体DNAではCpG配列中のシトシンはしばしばメチル化修飾を受けており、発生段階・組織に特徴的なメチル化模様を示す。DNAのメチル化は、組織特異的な遺伝子の発現、遺伝子刷込、X染色体の不活性化、胚発生などの現象に深く関わっている。染色体DNAのメチル化模様は、DNAのメチル化を触媒する各種のDNAメチルトランスフェラーゼである、Dnmt1、Dnmt3aとDnmt3bにより書き込まれている。各種Dnmtとその他のDNAメチル化状態規定因子を発現・精製し、その機能領域構造を明らかにすることを目指す。
Dnmt1(分子量180k)はC末端側40kDaにメチル化触媒領域を、N末端側に大きな「調節領域」と考えられる領域をもっている。N末領域のサブドメイン構造を明らかにする目的で、Dnmt1を培養昆虫細胞で高発現させ精製した。プロテアーゼに耐性を示す断片を解析した結果、プロテアーゼ耐性を示す36kDa領域の存在を示した。
Dnmt3a、3bの機能領域構造を明らかにするために、昆虫細胞で高発現させ精製した。Dnmt3a、3bいずれもde novoのメチル化活性を示した。
メチル化DNA結合領域をもつMBD4はT:Gミスマッチ認識グリコシラーゼ活性を合わせもつ。この分子を大腸菌で発現・精製して活性を調べた。cDNAを単離する過程で、脳組織に特異的なスプライシング・アイソフォームを見出した。この欠失領域はグリコシラーゼ触媒領域のすぐ上流に位置し、種間で良く保存されていた。