高等動物のゲノムはメチル化修飾を受ける。メチル化修飾はコードする遺伝情報は変えずに、遺伝情報発現制御に働く。ゲノムメチル化を調節するDNAメチルトランスフェラーゼ(Dnmt)には、関連遺伝子を含め4つ、Dnmt1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3L、がある。本研究では、DNAのメチル化がDnmtによりどのように調節されているかを明らかにすることを目指し、以下の結果を得た。
メチル化模様維持を担うDnmt1はDNA鎖のヘミメチル化部位を順番にメチル化すること、予想以上にメチル基を入れ損なうことを明らかにした。Dnmt1のN末端は独立な領域構造をとり、DNAの狭い溝に結合する活性を持つこと、また、Dnmt1はヘミメチル化DNAのメチル化模様を維持するためにNp95と呼ばれる因子を必要とすることを明らかにした。以上の結果はDnmt1がどのようにゲノムのメチル化模様を維持しているのかの理解に寄与する。
新たにメチル化模様の形成を担うDnmt3aはヒストンに巻きついたDNAをメチル化できないが、Dnmt3bはメチル化できることを明らかにした。また、Dnmt3aは裸のDNAを効率よくメチル化することを示した。Dnmt3aによるDNAのメチル化はヒストンH1により阻害され、ヒストンH1がDnmt3aによるゲノムのメチル化の制御に関わっていることを示した。ゲノム全体がメチル化される雄性生殖細胞ではDnmt3aのアイソフォームのDnmt3a2と補助因子Dnmt3Lが高発現する。この時期のメチル化模様形成にDnmt3Lは必須である。これは、Dnmt3a2が生理的な塩濃度でメチル化活性を示さないが、Dnmt3Lが存在すると活性が保たれるようになるためであることを明らかにした。以上の各Dnmt3の性質は、どのようにゲノムにメチル化模様が描かれるのかについての理解に寄与する。