本稿は,企業の経済活動に要する時間の経済的価値を貨幣価値で表示することの重要性に着目し,タイムコストという概念を,その測定によって,明らかにすることを主たる目的とする.そのために,第一に,タイムコストの定義と枠組を示す.第二に,予防,評価そして失敗コストといった,三つのタイムコストの枠組を,一作業現場,一企業,サプライチェーンに段階的に適用していく.第三に,タイムコストの測定を行うことから,第一で示したタイムコストの定義の妥当性を明らかにしたい.タイムコストを測定すると,タイムコストの定義は,意思決定目的だけでなく,業績評価目的を含んだ広義の解釈ができるという考察結果を得ることができた.これは,タイムコストの意思決定への利用を特に強調している従来の見解に新しい視点を採り入れたものと考える.