次世代管理会計システムのフレームワーク及びそのグローバル適用について日本国内におけるケーススタディと海外におけるフィールド調査を行った。具体的には京セラ,東京三菱銀行,新日本製鐵株式会社における管理会計システムの理論化を行った。その概要は以下の通りである。(1)京セラの経営システムはアメーバ経営として知られているが、そのアメーバ経営の特徴を組織的側面及び計算構造的側面から典型的アメリカ大企業とはまったく異なるものであることを明らかにした。(2)東京三菱銀行(名称は調査当時)では戦略マネジメントとリスクマネジメントが融合したマネジメント・システムが構築されつつある。東京三菱銀行米州本部では全社的な組織再編と規制環境に対応すべくBSCとリスクマネジメントの融合が行われた。(3)回収期間法は貨幣の時間価値を考慮しないとされていることから理論的には劣っているとされ七いるが,新日本製鐵株式会社で利用されている回収期間法が貨幣の時間価値を考慮していることが明らかになった。また,管理会計において近年生じた研究対象・研究目的・研究方法の変化について、その性格を明らかにし、次世代管理会計フレームワークの構築を試みた。研究対象としては日本企業の管理会計実践を中心とすること、研究目的としては多様な学問分野や経営実践の基盤として管理会計(学)をプラットフォームとして確立することを目指すこと、研究方法としては実践的知識と科学的知識を結びつける臨床的知識の重要性を認識したアプローチをとることの三点である。そのうえでケーススタディではその鮮明さが実務家への重要な洞察の伝達方法を改善しながら,理論的課題を劇的に表現し,特定のコンテキストにおける実例を調査することにより,実務家の学習訓練や,ひいては実践智の確立へ向けた貢献を果たすことができることを明らかにした。