本研究は、開発途上国における連携に基づく多国籍企業の市場展開のあり方のモデルを構築し、有効なアプローチの方法を提言することにある。本来BOPをはじめとする開発途上国へのアプローチは、利益追求型、ソーシャル・ビジネス、援助などに大別されるが、これらの違いを明らかにした上で、本研究の目的とする企業と国際機関や援助組織との連携による市場展開のあり方を模索することを目的としている。 しかしながら、昨今国連ミレニアム目標や環境問題の高まりからか、社会的な課題の解決を目的としたソーシャル・ビジネスと利益追求型のBOPビジネスが混同して論じられており、企業の動向にも曖昧さが見られることから、まずこれの違いを明確にし、学会・研究会報告や論文で提言を行った。 また初年度は在外研究でニューヨークに滞在していたこともあり、開発途上国援助に従事する国連機関やNGO組織などの同地に拠点を持つ機関にヒアリングを行うとともに、ソーシャル・ビジネスのグローバル・サミットに出席し、バングラディシュにおいて、ムハマド・ユヌス氏のグラミンとともにソーシャル・ビジネスを展開する多国籍企業の責任者に、企業がソーシャルビジネスを展開する意義とその戦略について、ヒアリングを行った。 その結果、企業と国際機関・NGOなどは、本来は異なるミッションと考え方と目的を有しているが、企業においても開発途上国における社会的な問題の解決を企業の社会的責任と位置づける限り、これらの組織が連携をしながら、効率的かつ両者のシナジーを高めながら活動をする可能性は十分にあることを確認し、2年目以降の具体的な調査と分析を通じて、最終的に研究をまとめることの意義の高さをあらためて確認することになった。