1980年に米国精神医学会が発表した精神障害診断分類体系DSM-IIIによる精神医学の「革命」が、その後、30年間にグローバル規模で医学、生命科学、医療等に与えた影響の実態と歴史的経緯を明らかにするために、文献調査とインタビュー調査によって以下の点を検証した:(1)DSM-IIIの操作的診断基準採用における診断の信頼性(一致率)の優先、(2)我が国における伝統的ドイツ精神医学のフレーム内でのDSMの受容、(3)DSM-5の章構造(生涯発達モデルと2因子モデル)の解明とその背景、(4)精神科診断の妥当性と有用性をめぐる論争と心理的本質主義、(5)DSMのグローバル化がもたらしたシニシズム