現在日本では、認知症の早期発見が推進されることで多くの人々が救済されると同時に、老いに対する不安も高まっている。北中は臨床現場での人類学的調査を通じて、認知症診断がもたらす不確実性が1)急速な薬理化、2)予防言説の隆盛とそこに潜む「魔術的思考」、3)「新健康主義」をもたらしていることを明らかにした。他方で、認知症臨床における当事者運動との協働から、従来の精神療法的共感の形に加え、脳神経科学的共感とエコロジカルな共感の誕生を論じ、地域精神医学におけるよりよい理解と共感の可能性について考察を行った。繁田は臨床記録を分析し、超早期診断が認知症当事者にもたらす影響や主体性の尊重に関する考察を行った。