近年、従来の精神疾患のカテゴリー的定義と分類よりもディメンション的スペクトラム・モデルが有力になりつつあるが、その心理アセスメントにおける有用性はなお未知数である。本研究では、精神病理症状の内在化-外在化スペクトラム・モデルに基づいて、複数の調査票を用いて臨床群と非臨床群の定量的分析を行い、従来のカテゴリー的臨床診断と比較検討することにより、精神疾患のスペクトラム・モデルの有用性と限界を明らかにすることを目的としている。2021年度においては、内在化-外在化スペクトラム調査票であるThe Inventory for Depression and Anxiety Symptoms (IDAS-II)とThe Externalizing Spectrum Inventory (ESI-BF)の各日本語版を開発するために、原著者の許可のもと、日本語訳及びバックトランスレーションによる確認をおこなっている。今後は、非臨床群における妥当性を検証する予定である。
また、解離症状に関するディメンション的構造(連続体モデル)を検証するために、解離体験尺度(DES)、改訂出来事インパクト尺度(IES-R)等を用いて、一般人口集団1,000名余を対象にインターネット調査を行った。本調査のデータは、現在、解析中であるが、解離症の連続体モデルの妥当性が必ずしも支持されない可能性がある。
さらに、先行研究において開発した日本語版Personality Inventory for DSM-5 (PID-5)の妥当性を再検証し、精神科診断において連続体モデルを仮定した心理アセスメントの有効性と限界について文献的考察を行い、論文等に発表した。