本研究は, 19歳から23歳までの日・韓女子大学生108名を対象に, 遺伝的形質を体格と体型で比較し, さらに環境因子の影響による身体的変化を身体組成から評価し比較した。また, 成人病の発症因子の一つでもある体内深部脂肪の蓄積量を検討し, これに関係が深いと考えられる栄養状態を評価して, 韓国人が多量に摂取している唐辛子の辛味成分であるカプサイシンについて考察している。結果は次のように要約できる。1) 日・韓両国で形態測定値に差がみられるのは, 上肢長, 頸囲, 上腕囲, および前腕囲で, いずれも韓国の方が有意に大きいが, その他の測定値ではほとんど差がなかった。身長に対する体重・胸囲・座高の比と, ローレル指数・BMI・体表面積を両国で比較してもほとんど同じで有意な差はなかった。2) 体型評価では, 両国とも内胚稟性得点が高く, 中胚葉, 次に外胚葉得点と低下する傾向は同様であるが, 内胚葉性得点は日本国の方が有意に高かった。3) 皮下脂肪厚では, 頬骨下線・大腿前部, 後部・背下部を除いてすべて日本国の方が大きな値を示したが, 総皮下脂肪厚と平均皮下脂肪厚では, 両国間に有意な差はなかった。また, 両国の皮下脂肪分布パターンにもそれほど大きな差はなかった。4) 体脂肪に関しては, 皮下脂肪量に有意な差がないだけで, 体脂肪総量, 体内深部脂肪量, 体脂肪率はすべて日本国の方が有意に大きかった。5) 1日の摂取エネルギー総量では, 韓国の方が有意に高く, 三大栄養素のエネルギー比では, 蛋白質に差がなく, 脂質エネルギー比では, 日本国が, 糖質エネルギー比では韓国がそれぞれ有意に高い値を示した。6) 1日の消費エネルギー総量では, 両国間にほとんど差がなく, 生活内容別消費エネルギーでは, 睡眠時・座位時・立位時の消費エネルギーには有意な差はみられないが, 歩行による消費エネルギー量は日本国の方が有意に高かった。7) 1日の捏取栄養素量の比較では, 脂質とビタミンB_1に有意な差がみられないだけで, その他の摂取量はすべて韓国の方が有意に多かった。しかし, 動物性の蛋白質と脂質の摂取量は, 逆に日本国の方が多かった。