文部科学省の「英語の使える日本人」構想など、学校教育機関における英語教育への期待は依然にも増して高く、児童、生徒、学生など青少年の英語学習者を対象とした研究も盛んに行なわれてきた。しかし、一方で、「学校」を卒業した成人の英語学習者についての研究は少ない。英語が生涯学習としても定着し、グローバル化が進むなかで、成人の英語学習の現状と、そこから見える課題をまとめることが、本年度の研究のひとつの目標であった。成人英語学習をとりまく現状として、(1)日本人の英語観、(2)企業における英語政策、(3)商業化、IT化された英語学習、の3点が大きな特徴としてあげられる。日本人の英語観については、多くの言説がある。そのほとんどが、否定的なもので、日本人のメンタリティや歴史観に関連したものであることがわかった。企業において、TOEICのスコアを昇進や昇格の条件にしたり、スコアの伸長に報奨金を出したりと、TOEICを使った「アメとムチ」の英語政策を行なっている。成人の英語学習は、市中の英会話学校や書籍など商業化されており、また、近年のIT化は学習手段の多様化をもたらした。上記の現状を肯定的に考慮し、成人英語学習の課題をまとめた。すなわち(1)学習ニーズの多様化、高度化、顕在化への対応、(2)学習環境の整備、(3)学習支援者の創出である。成人英語学習者の今日的ニーズを把握し、それに対して、適切な学...