プロジェクト研究「幼稚園教育実習の現状と幼稚園教諭養成の課題」「同2」によって行った3次に亘る幼稚園等調査結果のまとめである。前プロジェクト研究と併せて、九州7県の幼稚園、幼稚園型認定こども園、幼保連携型認定こども園を(計1,790園)対象としてアンケート調査を実施するとともに、学生から見た幼稚園教育実習と大学での事前事後指導についての認識や実態についての情報を広く伝えることができた。(回収数775園)結果の概要は以下の通りであった。調査結果は県別で大きな違いは見られなかった。詳細な数字は本稿を参照されたい。①事前事後指導の重要性に対して実習園と学生で乖離が見られた。具体的には実習園側は各種の「保育者としての心構え・役割に関する知識」等を重視しているのに対して学生側は「先輩の作品集」などの設定保育に必要な情報を重視していた。
②「実習が楽しかったか」という学生への設問に対する自由記述等を見ると、実習に対する養成校の認識が、楽しいかどうかを問題にすべきではないと言う「修行モデル」と楽しさを評価する「育成モデル」に分かれているように感じられた。
③全日半日保育の実施度の低下は学生の問題だけでなく園の状況が影響しているとの回答が予想外に多かった。従って学生指導の向上だけでは回復が望めないことが窺えた。
④実習訪問については「学生サポート」と「大学との情報交換」の2面が実習園に意識されている。
⑤登降園時間のばらつきも実習園の実習生に対する認識(学生・職員の一員)の違いが影響しているとともに、できるだけ多くの体験をさせたいという意識が反映している様であった。
⑥睡眠時間・健康に関しては睡眠不足を当然視する考えと憂慮する考えに分かれていた。積極的な対応として睡眠不足の一因と考えられる日誌作成等の持ち帰りを減らす試みが福岡県以外の回答の中で見られた。
⑦重要な園務・作業は全県で清掃関係が群を抜いている。清掃関係は園の環境整備に繋がる学習ではあるが、清掃を教育上重視する伝統的価値観の影響が大きいように感じられた。一方で「実習生は用務員ではない」との現状に対する反発も見られた。今後は育成モデルの中での清掃の在り方を探っていく必要を感じた。