我が国では高齢化の進展の中で食料品店の減少が加速化している。商業統計によると飲食料品小売業の店舗数は1997年の526千から,2007年の390千に10年間で26%減少した。一方,我が国の高齢化は世界一の水準となっており,今後一層進展することが予測されている。このようななかで,高齢者を中心に食料品の買い物で不便や苦労を感じる住民が顕在化しつつあり,近年,「買物難民」あるいは「買物弱者」として注目を集めるようになった。食料品店の減少が惹起するこのような問題は,欧米ではフードデザート問題として知られている。フードデザート問題は,「食料品供給体制の崩壊」と「社会的弱者の集住」が重なったときに生じる(岩間編・2011: 1)とされているように,基本的には都市的な問題である。しかし,我が国で社会的弱者と考えられる高齢者が多数居住している農村地域でも,Aコープの閉店や,公共交通機関の縮小などにより食料品の買い物における不便や苦労が増加しているという実態がある(農林水産政策研究所・2012: 160-161)。