本研究では、若年女性において、生体の酸化ストレスレベルの指標である尿中8-オキソグアノシン(8-oxo-Gsn)を測定し、それに関連する因子を同定することを目的とした。
本学の健康調査であるヘルスチェックを受けた栄養科学科女子学生 137名(21~24歳)の尿を採取し、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて尿中の酸化ストレスマーカー8-oxo-Gsn(クレアチニン補正値;Cr)を測定した。尿中8-oxo-Gsn値が、基準範囲を超える者(>1.557 µmol/mol Cr)を高値群(36名)、1.557以下の者を正常群(101名)として分け、血液検査項目、体組成および食品・栄養素摂取量との関連を解析した。
尿中8-oxo-Gsn高値群は、正常群と比較して、HbA1c、γ-GTP、尿pHが有意に高く、エネルギー摂取量、尿中カリウムが低値であった。また高値群は、大豆、植物性たんぱく質、植物性脂質および油脂の摂取量が、正常群と比較して有意に低かった。さらに相関分析においても、尿中8-oxo-Gsn値は、γ-GTP(r=0.150, p<0.05)、尿pH(r=0.287, p<0.01)と有意な正の相関を認め、尿中カリウム(r=-0.178, p<0.05)、摂取エネルギー量(r=-0.193, p<0.05)、食塩摂取量(r=-0.181, p<0.05)、大豆摂取量(r=-0.304, p<0.01)、植物性たんぱく摂取量(r=-0.226, p= p<0.01)、植物性脂質摂取量(r=-0.256, p<0.01)、ナトリウム摂取量(r=-0.203, p<0.05)、カルシウム摂取量(r=-0.188, p<0.05)、リン摂取量(r=-0.142, p<0.05)、鉄摂取量(r=-0.174, p<0.05)、ビタミンB2摂取量(r=-0.158, p<0.05)、と有意な負の相関を認めた。
今回の若年女性の尿中8-oxo-Gsn値の解析では、これまでに酸化ストレスとの関連が報告されているγ-GTPに加えて、尿pHや尿中カリウム排泄量との相関も認めた。さらに、尿中8-oxo-Gsn値は、エネルギー、大豆摂取量、植物性たんぱく質、植物性脂肪、食塩、カルシウム等の摂取量と有意な負の相関を認めることから、若年女性においては、十分なエネルギー摂取、特に豆類の摂取が、酸化ストレスの軽減に有効である可能性が示唆された。