修士・博士論文指導等

基本情報

氏名 河手 久弥
氏名(カナ) カワテ ヒサヤ
氏名(英語) HISAYA KAWATE
所属 中村学園大学 栄養科学部 栄養科学科
職名 教授

研究テーマ・研究領域

論文タイトル

妊娠・授乳期の骨超音波値の経時的測定とそれに関与する因子の探索

概要

【目的】骨粗鬆症は、閉経後女性に多くみられるが、妊娠後、特に授乳期に骨粗鬆症により多発脊椎圧迫骨折を引き起こす妊娠・授乳関連骨粗鬆症が報告されている。しかし、その原因はいまだ不明な点が多く、治療法も確立していない。本研究では妊娠期および、授乳期の骨超音波値を経時的に測定し、それに関与する因子を探索することを目的とした。
【方法】福岡県内のS病院産婦人科を受診した妊娠14週未満(妊娠前期)の妊婦に対して、身体測定、生活調査、腫骨骨超音波検査、血液検査を行った。その後継続して調査が可能な妊婦については、妊娠後期、出産後1か月、4か月、12か月にも同様の調査を行った。
【結果】解析対象者数は、妊娠前期99名、妊娠後期61名、出産後1か月67名、出産後4か月43名、出産後12か月21名であった。妊娠前期における骨超音波値で高値群49名、低値群50名の2群に分けて比較したところ、高値群は、体重、腹囲、妊娠前体重、中性脂肪が、低値群と比較して有意に高かった。また低値群は、骨吸収マーカーTRACP-5bが、高値群より有意に高かった。出産歴の有無で2群に分けて比較したところ、妊娠前期の骨超音波値は、出産歴がある群が、出産歴がない群と比較して有意に低かった。骨超音波値は、出産後4か月、12か月にかけては減少する傾向にあった。骨超音波値とその他の測定項目の相関関係を検討した結果、妊娠前期では、身長、体重、腹囲、妊娠前体重について、骨超音波値と正の相関関係が認められた。妊娠後期においては、プロラクチンが骨超音波値と正の相関関係を示した。出産後12か月においては、エストラジオールが骨超音波値と有意な正の相関関係を示し、総コレステロール、カルシウムについては骨超音波値と負の相関関係が認められた。
【考察】骨超音波値は、測定時の体重および妊娠前の体重と正の相関を認めた。やせている女性は、特に授乳期に骨折のリスクが高まることが懸念される。妊娠前に適正体重を維持することが、妊娠・出産時の骨密度低下を防ぐために重要であると考えられる。また、過去に出産経験がある群は、骨超音波値が有意に低く、出産後12か月でも骨超音波値は低下傾向にあった。妊娠・授乳を行った人が、次の妊娠までの間隔が短い場合は、骨密度が回復しないうちに次の妊娠・授乳を迎えるため、さらに骨密度が低下することが考えられるため注意が必要である。