【目的】 高齢2型糖尿病患者におけるフレイル(虚弱)の実態を調査して、フレイルに関連する因子を解析することを目的とした。
【方法】2017年に福岡県内のH病院またはC病院の糖尿病外来を受診した高齢2型糖尿病患者59名(平均74.3歳)に対して、身体測定、体組成測定、握力測定、血液検査、食事調査、フレイル評価(基本チェックリスト、J-CHS基準)等の調査を行った。食事調査では、栄養素の摂取量の粗値とエネルギー産生栄養素は総エネルギーに占める割合、体重1㎏当たりのたんぱく質摂取量を算出し、他の栄養素は密度法による1,000kcal当たりのエネルギー調整値を算出した。
【結果】高齢2型糖尿病患者における基本チェックリストを用いたフレイルの評価では、対象者59名中、健常31%、プレフレイル39%、フレイル31%で、J-CHS基準では、健常24%、プレフレイル59%、フレイル17%であった。項目別でみると、フレイル該当者は、「運動・転倒」「記憶・物忘れ」「口腔機能」「抑うつ気分」の項目を多く選択していた。フレイルスコアと相関する因子を検索したところ、フレイルスコアは、年齢、脈拍数と正の相関関係、体重、筋質点数、握力と負の相関関係があり、摂取栄養素では、粗値で、カリウム、βカロテン、ビタミンK、ビタミンC、飽和脂肪酸、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、総食物繊維が負の相関関係があり、調整済み栄養素では、ビタミンK、ビタミンB2、飽和脂肪酸が、負の相関関係を認めた。さらに、これら有意な相関が認められた項目を独立変数とし、フレイルスコアを従属変数とする重回帰分析では、筋質点数(β:-0.530、p<0.001)、体重(β:-0.323、p=0.007) 、ビタミンC (β:-0.269、p=0.023)が有意な負の関連を認め、特に筋質点数が最も強い相関を認めた。
【考察】基本チェックリストにおけるフレイルスコアは、筋質点数と強く関連しており、高齢2型糖尿病患者におけるフレイル評価は、筋肉量の測定だけでなく、筋質を評価することが重要であることが示唆された。摂取栄養素では、ビタミンC、ビタミンK、βカロテンなどの抗酸化作用のあるビタミン類との関連が見られ、これらの栄養素の摂取がフレイルへ陥るリスクを低下させる可能性が示唆された。