みなさんは、「フレイル」という言葉をご存じでしょうか。最近はマスコミでも取り上げられる機会が増えましたので、お聞きになった方も多いのではないかと思います。
「フレイル」とは、加齢や病気などに伴い、心身のさまざまな機能が低下した状態のことで、「自立した生活ができる健康な状態」と「介護を受けなければいけない状態」の中間に位置しています。
「フレイル」は、①身体的脆弱性(筋力低下、運動機能低下)、②精神・心理的脆弱性(認知機能障害、うつ)、③社会的脆弱性(独居、経済的困窮)など多面的な問題を抱えやすく、これらが負の連鎖を起こすことで、要介護や死亡などを含む健康障害を招きやすいハイリスク状態です。
一方で「フレイル」は、運動・栄養・社会参加などの適切な介入や支援により、生活機能の維持・向上が期待できます。「フレイル」から健康な状態に戻すことで、自立した生活を送ることできる健康寿命を延ばすことが可能になります。
フレイルの診断には、国際的に統一された基準がまだありませんが、わが国ではJ-CHS基準がよく用いられており、意図しない体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目で評価します。
厚生労働省は、2020年4月より、75歳以上の後期高齢者を対象とした「フレイル健診」を開始しました。「フレイル」になっていないかをチェックする「後期高齢者の質問票」を用いて、「フレイル」の早期発見および重症化予防を目指しています。
本講演では、「フレイル」について理解していただくとともに、「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」などの似た概念についても、わかりやすく説明したいと思います。