【目的】 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は若い女性に多くみられるが、健 診等で甲状腺ホルモンの血中濃度を測定する機会はほとんどない。 本研究では、血中甲状腺ホルモン濃度に関連する因子を探索し、バ セドウ病の早期発見につなげることを目的とする。
【方法】 対象は、2021 ~ 2023 年に本学での健康栄養実態調査に参加した女 子大学生 1481 名とした。調査項目は、身体測定、血液・尿生化学検査、 甲状腺ホルモン(FT4)濃度、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度、食 事調査で、統計解析は IBM SPSS(有意水準は 5%未満)を用いて行っ た。
【結果】 ① FT4 が基準値を上回る人は 19 名 (1.3%) で、そのうち TSH が基準 値を下回り、バセドウ病が疑われる人は 6 名 (0.4%) であった。 ② FT4 と関連する項目を探索するために、FT4 を従属変数とした重 回帰分析を行ったところ、尿中カリウム(K)排泄量(β =-0.189)、 ヘ マ ト ク リ ッ ト(Ht)( β =0.171)、Cr( β =-0.122)、Na( β =0.117)、LDL-C(β =-0.351)、心拍数(β =0.101)、尿中 Na 排泄量 (β =0.100)、Ca(β =-0.168)、アルブミン(Alb)(β =0.174)、ア ポ蛋白 B(β =0.269)、アポ蛋白 A-1(β =-0.057)が、有意に関連 する因子として抽出された。 ③同様に TSH を従属変数とした重回帰分析を行ったところ、中性脂 肪(β =0.132)、血中 K(β =-0.094)、P(β =0.071)、最低血圧(β =0.052)が、有意に関連する因子として抽出された。 ④栄養素摂取状況との関連では、エネルギー、たんぱく質、脂質摂 取量と FT4 が、負の相関を認めた。
【結論】 通常の血液検査で測定する Ht、Na、LDL-C、Alb、などを組み合わせ ることにより、バセドウ病の早期発見につながる可能性があること が示唆された。