サルコペニア(筋肉減少症)は、加齢や病気が原因で筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のことをいいます。超高齢社会が進行する中で、サルコペニアの人の割合は、今後さらに増えることが予想されています。一方、フレイルは要介護に至る前段階と位置付けられ、身体的要因だけでなく、精神・心理的要因(認知症、うつなど)や社会的要因(独居、経済的困窮など)も含む概念です。サルコペニアやフレイルは、高齢者の身体機能障害のリスク因子であり、要介護状態や死の転帰に陥りやすいことが知られています。サルコペニアを診断するには、まず握力・歩行速度を測定します。どちらか一方でも低下している場合には、骨格筋量を測定し、骨格筋量の減少を認める場合にサルコペニアと診断されます。また、サルコペニアの簡単なスクリーニング検査としては、「指輪っかテスト」が用いられています。フレイルに関しては、現時点で統一された診断基準はなく、今後の策定が期待されています。
サルコペニアやフレイルは、糖尿病などの生活習慣病の進行にも関与しています。食事で糖質を取った後は、一時的に血糖値が上昇しますが、膵臓から分泌されるインスリンの働きで、血糖の約80%は筋肉に取り込まれるため、血糖値はすぐに正常範囲に戻ります。ところが、サルコペニアで筋肉量が減少している人は、糖が取り込まれる場所が少なくなるために、血糖値(特に食後血糖値)が上昇したままで、糖尿病を発症することになります。また、サルコペニアやフレイルにおける身体活動量の低下も血糖値上昇に繋がります。サルコペニアやフレイルは加齢に伴って進行しますが、早期に適切な介入(栄養療法と運動療法の併用)を行うことにより、その進行を遅らせて健康寿命の延伸に繋がることが期待されます。運動面では、有酸素運動と筋力トレーニングの併用が効果的とされています。栄養面では、適切なエネルギー摂取、十分なたんぱく質(特にロイシンなどの分岐鎖アミノ酸)の摂取、ビタミンDの摂取(あるいは日光浴)などが推奨されています。