【目的】
妊娠・授乳関連骨粗鬆症は、比較的稀な疾患であるが、妊娠・授乳期に骨折を起こすと激しい腰背部痛を伴うため、子育てや日常生活に大きな支障をきたす。しかし、妊娠・授乳関連骨粗鬆症の原因に関しては、未だ不明な点が多く、推奨される治療法も確立していない。そこで本研究では、妊娠期および授乳期の音響的骨評価値(osteo-sono assessment index:OSI)を経時的に測定し、それに関与する因子を探索することを目的とした。
【方法】
福岡県内のS病院産婦人科を受診した妊娠14週未満(妊娠前期)の妊婦に対して、身体測定、生活調査、踵骨骨超音波値、血液検査を行った。その後、継続して調査が可能な妊婦については、妊娠36週以降(妊娠後期)、出産後1か月にも同様の調査を行った。
【結果】
解析対象者数は、妊娠前期99名、妊娠後期61名、出産後1か月67名であった。妊娠前期において、身長(r=0.199、p=0.048)、体重(r=0.267、p=0.007)、腹囲(r=0.265、p=0.008)、妊娠前体重(r=0.283、p=0.005)が、骨超音波値と有意な正の相関関係を認めた。妊娠後期においては、血清プロラクチン値(r=0.276、p=0.032)が、骨超音波値と有意な正の相関関係を示したが、出産後1か月においては、有意な相関関係が認められる項目は認められなかった。
【結論】
今回の研究では、骨超音波値を測定した時点での体重と妊娠前の体重がいずれも骨超音波値と正の相関を示すことが明らかとなった。痩せている女性は、妊娠前から骨密度が低下している可能性が高いため、妊娠・授乳期の一時的な骨密度低下で、特に授乳期に骨折のリスクが高まることが懸念される。妊娠前に適正体重を維持することが、妊娠・授乳期の骨密度低下を防ぐために重要であると考えられる。