修士・博士論文指導等

基本情報

氏名 鵜崎 清貴
氏名(カナ) ウザキ キヨタカ
氏名(英語) UZAKI KIYOTAKA
所属 中村学園大学 流通科学部 流通科学科
職名 教授

研究テーマ・研究領域

2014年度博士学位請求論文

論文タイトル

『新規株式公開の実証研究:マレーシア証券取引所におけるイスラム法準拠企業と非準拠企業による分析』

概要

本論文は,世界中で認められている新規株式公開(Initial Public Offerings:IPOs)の短期・長期の2つのパフォーマンス,すなわち①アンダープライシング(初値が公開価格を大きく上回ることにより,短期間に高い収益率が生じるため,公開価格が過小評価されていること)と②株価の長期低迷(公開初日に高い初値で引けた後,株価が長期にわたり低迷すること)について,マレーシア証券取引所(Malaysian Stock Exchange:MSE)に上場しているIPO企業を分析し,この2つの事象を検証するとともに,その発生要因を明らかにしたものである。
第1章のイントロダクションでは,マレーシアにおける証券市場の現状を述べ,そこにはイスラム法に準拠した企業(イスラム法準拠企業)とイスラム教に準拠していない企業(非イスラム法準拠企業)が混在しており,その証券市場でIPO関連の法律の推移を述べるとともに,IPO企業数の推移を概略している。第2章では,世界のアンダープライシングとアンダーパフォーマンスとの先行研究を丹念に調べ,現象の発生だけではなく,その原因も整理している。第3章では第2章で議論された先行研究をもとに,本研究で用いられる変数の定義とデータの説明を行っている。第4章では,実証分析期間2000年から2011年におけるマレーシア証券取引所でIPOを行った企業をイスラム法適用企業(419社)と非イスラム法適用企業(51社)とに分け,①アンダープライシングについて検討を行い,イスラム法適用企業と非イスラム法適用企業がそれぞれ28.94%と27.18%と高いことを明らかにした。産業別では,重工業,物流,機械,そして農業で非イスラム法準拠企業が高いアンダープライシング生じていることが分かった。その要因の1つが,アンダーライター(証券会社)の名声と考えたが,優位な分析結果を導き出すことはできなかった。次に②株価の長期低迷については,2006年から2010年にIPOを行った企業の3年間の株価を分析し,累積異常収益率の推移を検討したが,アメリカや日本と異なり,発生を確認できなかった。これは,検証期間が2006年から2010年と比較的短期間であり,データも少ないことから,十分に分析できなかったためと考えられる。第5章での結論では,2000年-2011年のマレーシア証券市場においてIPOを行った企業のアンダープライシングの現象が確認された。