近年、コーポレート・ガバナンスが盛んに議論されるようになった。本稿では、企業が新規株式公開を行う際、「所有と経営が分離されている」企業と「分離されていない」所謂アントレプレナー・ベンチャー(Entrepreneurial Venture)では、どのようにコーポレート・ガバナンスが異なるのかを考察する。ここでは、2000年-2003年JASDAQ新規登録企業のうちの277社のデータを用い、コーポレート・ガバナンスの代理変数として、種々の財務データーを用いて、IPO時の「所有と経営が分離した企業」と「所有と経営が一致した企業」におけるコーポレート・ガバナンスの相違がいかに当期純利益に影響を及ぼすかを考察した。オーナー一族が発行済株式数50%以上保有のアントレプレナー・ベンチャーにおいて、当期純利益の変動を説明する要因は、経過年数、売上高、純資産額そして総銀行株式数比率が有意となった。総銀行株式数比率が多ければ、銀行からの指導が強くなり、その結果として当期純利益が多くなると考えられる。つまりオーナー一族が発行済株式数50%以上保有のアントレプレナー・ベンチャーにおいて、コーポレート・ガバナンスが株主の価値に良い影響を及ぼしたと考えられる。