明治期酒造業固有の帳簿記録から見る酒造経営-灘酒造家の「酒類蔵出帳」と「酒類売上帳」の考察から-
土井貴之
明治29(1867)年度における灘酒造家(柴田家)の一次史料となる「酒類蔵出帳」と「酒類売上帳」,酒税に関する申告書が綴られた「明治29年醸酒諸般文書」の記録内容から,経済史や経営史を中心とした先行研究で明らかにされていた酒造業固有の商慣習を会計的な視点から検証した。具体的には,樽売・瓶売・積送販売の販売記録と垣間見える当時の収益認識,蔵人に振舞われていた酒の取引記録,酒税が酒造経営を圧迫していた状況について言及した。
流通科学研究