本研究は,今の子どもたちの表面的な「からだ」にみられる変化だけに限らず,内面的な「こころ」の変容に注目し,幼児期や児童期の運動活動や戸外遊びなどの実態を調査することによって,子どものからだや心に起こる問題と関連付けながら,体育教育の課題を探っていくための基礎的資料を得ることを目的とした.そこで子どもの実態調査を行い,以下のような結果を得ることができた.1.幼児期の生活スタイルと運動遊び・おけいこごととの関連(1)降園後の「運動遊び」の有無や「スポーツ系の習いごと」の有無が,「テレビ・ビデオ視聴時間」に影響を及ぼしていることが示唆された.睡眠や食事に関わっては,明らかな差が認められなかったことから,今回の調査対象となった幼児の生活リズムにとって,「テレビ・ビデオ」視聴時間が大きな比重を持っていることが推察される.(2)「運動遊びをして遊んだ子ども」たちの保護者は,「それを全くしなかった子ども」たちの保護者より,子どもたちがより「戸外でよく遊び」「活発に身体を動かして遊び」「友だちと仲良く遊んでいる」と感じ,そしてその遊びに子どもたちが「満足している」ようだと感じている傾向にあった.(3)今回の調査では,降園後の「運動遊び」の有無や「スポーツ系の習いごと」の有無と運動能力との関係は認められなかった.2.児童・生徒の社会的スキル,心の健康,運動の有能感,体育授業に対する態度との関連...